聴覚過敏とは?
聴覚過敏(Hyperacusis・Phonopobia)とは、感覚過敏の一つで、身の回りの音が日常生活に支障が出るほど大きく聞こえることで、不快感や心的ストレスを感じる症状のことです。特定の音に対して過敏になる子、周りの音全てが苦痛と症状や特徴は人それぞれです。体調がすぐれない、疲れている時に症状が強く現れることもあります。稲福ら(2013)の研究でも、ASDの子どもの中には本人は自覚がないが、感覚過敏を持っている子どもが多いことが指摘されています。
聴覚過敏の原因と発生率について
脳の機能、耳の機能、心理的なストレスによる原因が報告されています。ASDの子供における聴覚過敏については、杉山(2000)は高位中枢における聴覚の選択的注意の障害が根本的病理と報告しています。しかし、病理解明には至っていないのが現状です。中川(2012)の特別支援の小学生調査によると、聴覚過敏があると回答した子どもは45%、過去に聴覚過敏があると回答した子供も含めると75%になるとされています。発達障がいが疑われる子供には比較的多い症状といえます。
聴覚過敏の子どもの特徴について
聴覚過敏の子供では、尖った甲高い音が苦手とされています。犬の鳴き声や子供の声、スーパーやでポートの館内放送が苦手は苦手なようです。Rosenhall(1999)がASDの子供192名の小児に行った脳波で聴力を見るABR(聴性脳幹反応)検査では、21名が80dbの音に耐えられなかったという報告があります。80dbとは日常ですと、地下鉄の車内、交差点などの騒音です。青木らによる「小学校教室内の音環境調査」によると、学校場面では、小学1年生の学級では、国語、音楽、給食、学級活動、どの時間においても80db以上であり、学年が上がるとともに教室内の音も変化し、6年生では60db前後になると報告されています。聴覚過敏の子供が苦手な音にさらされると、ぐったり疲れてしまう、会話の内容が頭に入らない、音が気になって集中できないなどの症状が現れ、心身の不調につながるとされています。
聴覚過敏の子どもに必要なこと
根本的な原因が不明な症状ですので、環境調整などの対策が主に取られます。
①苦手な音の刺激を取り除く、軽減する。
②耳に入る音を減らす、苦手な音を防ぐためのイヤーマフの使用。これは、子供にとって安心グッズにもなり心理的にもよい効果があります。
③静かなスペースの確保。子供が休める静かな部屋などを用意して休憩できると理想的です。
④不快な気持ちへの対処法。リラックス法を身につけることで、聴覚過敏の起きた場面への怖さや、苦手でも大丈夫という感覚が養えます。学年が上がるにつれて聴覚過敏の傾向は低下する傾向にありますので、苦手な場面でもコントロールできるという巻買うを身につけることが低学年では重要になります。
まとめ
環境調整が主な対応策ですが、苦手な音、それが発生する状況は子どもによって異なります。まずは、その子がぐったりしてしまう前の状況について観察し、環境改善に取り組むことがベストです。Study Lab Rootsではリラックス法としてイギリスやNYで行われている、子供むけのマインドフルネス呼吸法を取り入れた授業をご提案しております。
参考・引用文献
・稲福繁・伊藤真理・早川徳香(南山大学)・井脇貴子・鈴木朋子・船崎康広・吉田敬(2017)「自閉症スペクトラム障害における聴覚過敏」健康医療科学研究第3号pp1-7
・Rosenhall .U .,V.,Standrom .M .,Ahlsen ,G .,&Gillberg ,C .(1999).Autism and Hearing Loss. Journal of Autism and Developmental Disorder s29(5)349-357.
・杉山登志郎(2000)「自閉症の体験世界 高機能自閉症の臨床研究から」『小児の精神と神経』40(2) 88-100
・高橋 秀俊・上野佳奈子・中村亨(2018)「教室内音環境と聴覚処理特性が子どものメンタルに及ぼす影響」・中川辰雄訳(2012) 『聴覚過敏――仕組みと診断そして治療法』海文堂出版.